リクナビ問題を考える
リクナビが学生毎の内定辞退率を割り出し、販売していたことが判明しました。
リクナビが学生から同意を得たとする「説明」では「企業に内定辞退率が渡されるとは到底理解できない」と政府の個人情報保護委員会。是正指導・勧告の教訓を考えます。https://t.co/Q5MFWG7VYq
— 日本経済新聞 電子版 (@nikkei) 2019年8月26日
リクナビがどの様にして内定辞退率を割り出していたのか、過去の傾向や統計なのか、独自の判断基準なのかよくわかりませんが、
学生の将来を大きく変えてしまう事をしていたのは事実です。
とても許される事ではありません。
本当に悔しい問題です。
このリクナビ事件は情報化社会の問題、法律問題など様々な問題が見えていますが、私は就活の視点で何が問題なのか考えてみたいと思います。
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学生はリクナビとどの様に接しているのか
リクナビの情報収集
大抵の大学生は、3年生になるころ就職先を意識しだし、企業の情報を集め始めます。
しかし企業の数はものすごくあり、自力で一社一社確認するのは不可能です。
そのため大抵の場合は就職情報サイト(リクナビ)から企業情報を入手します。
リクナビから企業情報を得るためにはサイト利用者の登録が必要になります。
登録するにはいくつもの情報入力を求められます。
性別、学校、学部、興味、希望、動機などです。
登録した情報を基に
「あなたの希望と合う会社」
「あなたの先輩が勤めている会社」
「積極採用予定の会社」
など紹介されます。
それら紹介された会社の情報を見ると、「この会社を見た人はこちらも確認しています」と別の会社も紹介されます。
これらは全てリクナビに対する情報の提供です。
ここまでがリクナビの情報収集時期です。
リクナビの就活対応時期
その後就活時期になりますが、その時期になるとリクナビも変わってきます。
情報サイトからエントリー窓口サイトに変わってきます。
「あなたのライバルは20社エントリーしています」
「以前見た〇〇社へのエントリーはこちら」
とエントリーを促されます。
それに加え、ESや面接について「内定の取りやすい手法」が特集され、
学生に就活とはどういものなのか
どの様に準備するのか
どの様に行動するのか
服装はどうするのか
などが統一されます。
リクナビによる標準化です。
就活の準備のため会社情報を見ようとリクナビに登録すると、リクナビに紹介された会社へエントリーをすることになり、リクナビに教えられたESの書き方に従い、面接手法に従い、服装や髪形も従うことに成ります。
リクナビが意図してようがしてまいが、リクナビの情報により学生は整理されているんです。
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リクナビから見たお客とは誰なのか
リクナビは企業です。企業は収益が必要で、必ずお客が存在します。
企業にとってお客とは対価を払う人ですよね。
ではリクナビのお客とは誰でしょうか?
学生はリクナビに対価を払っていますか?
学生に対するリクナビの会費はいくらでしょうか?
0円ですよね。
と言うことはリクナビにとって学生はお客ではないってことです。
リクナビに対価を払っているのは誰かというと、新卒採用を行う企業です。
各企業から紹介料を貰っています。
リクナビは各企業から
「我が社へ優秀な人材を紹介して欲しい、これこれこういう人が欲しい」
と依頼を受けています。
リクナビは企業から提示された「これこれこういう人」と言う条件に合う人をエントリーさせたいのです。
その為学生を集め、登録させ、情報を入力させ、お勧め企業を提示し、エントリーを促しています。
企業から見ると、
リクナビ経由でエントリーした学生はESの書き方も面接時の対応も服装など見た目も統一されており、比較がしやすい。
そして依頼した条件の人材に近い人が集まっている。
という訳です。
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企業はどの様に学生を集めているのか
企業はどの様にして欲しい人材を見つけるのでしょうか。
企業はどこも優秀な学生を欲しがります。どこもそうです。
会社によっては、お金を稼ぐ人が優秀、新しい商品を作れる人が優秀、交渉の出来る人が優秀、など優秀の意味が違いこそすれ優秀な人を求めています。
では優秀な人を効率よく集めるにはどうすればいいでしょう。
その方法は大きく2つです。
- 研究や学問で実績のある生徒を教授推薦や学校推薦してもらう
- 就職情報サイトで集まった学生から条件に合う生徒を紹介してもらう
この2つ目がまさにそうですね。
対価を支払って学生を紹介してもらっています。
転職の場合は転職エージェントが直接紹介が出来ますが、就活の場合は紹介ではなく自らエントリーをしてもらわなければいけません。
しかし企業は「何人紹介して欲しい」ではなく「うちの求める人材を紹介して欲しい」と依頼します。
学生は就活で何を武器に戦っているのか
では学生は就活で何を武器に戦っているのでしょう。
ESの書き方、SPIスコア、面接時の自己アピール。これらに全力を注いでいます。
そして学歴。これは就活時には変えようが無いので利用したりカバーしたり検討が必要です。
これらを武器に戦っていると考えていました。
しかしこれらに加え、今回のリクナビ問題で就職情報サイトが何か企業へ採用に関わる情報を提供していることが明るみに出ました。
学生は持っている武器を必死に使い戦っているのに、学生が知らないところでとても重要な情報が企業側に提供されていたという訳です。
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リクナビ問題まとめ
学生にとって本当に悔しい事実が明るみになりました。
リクナビが独自に集めた情報を独自に解析し作った「内定辞退率」を企業へ提供していました。
この情報は学生の提供した個人情報やサイトの活用情報を基に割り出しており、学生は意図もコントロールも出来ないものです。
リクナビが個人の将来を決めてしまう情報を独自に作成し、企業へ提供していたのです。
これは何が問題かというと、学生がどうにもできないと言うことです。
リクナビに登録し個人情報を提供すると、リクナビで内定辞退率を着けられてしまい企業へ販売されていました。
リクナビで内定辞退すると名指しされた学生は、企業の採用判断時にどの様に判断されたのでしょうか。プラス評価にはならない事は明確です。
一企業が個人の人生を変えてしまっている可能性があります。
リクナビにとってはこれが問題となる前は、お客に対するサービスの一環として商品情報の提供だったのでしょう。
リクナビのお客は企業で、商品は学生です。
情報化社会で何でもデータ化されています。これも技術的には情報化の一種でしょう。
リクナビは自社のデータ解析結果を自社だけで利用すべきでした。
内定辞退が問題なのは分かります。
それによりリクナビの紹介者の内定辞退率を下げたいのも分かります。
内定辞退率を下げるには、その該当ユーザに対し内定辞退とならないようサポートすべきです。
「この学生は内定辞退する可能性が高いですよ」と企業へ費用を受け取り販売するのは、倫理観に大きく欠けているとしか考えられません。
そして、この事件を目にして考えたんですが、本当にこの内定辞退率だけでしょうか?
過去同様の事をやってきていないのだろうか?
過去就活時にリクナビを使った人、リクナビだけでなくリクルート社が就活に関わり何十年にもなりますが、企業へ独自の情報提供は一切ないのだろうか?
この際に全てを明るみして欲しいですね。
これはとても悔しい、やるせない事件です。
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